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2.アルパマヨ

2.アルパマヨ南西壁フレンチダイレクトルート
P6300343
6.25 朝8時、カルアスの町を出発。登山口となるサンタクルス谷に車に乗って向かう。細い未舗装の山道を曲がりくねりながら、どんどん山奥へと上がっていく。AM10時、標高2900mの登山口のカシャパンパ村に到着。ここから歩いて谷に入っていく。すでにロバや馬たちが待っていて、手早く私達の荷物を積んでいく。
この谷の入り口に、鋭鋒サンタクルス6259mがあるのだが、手前の峰々に囲まれているため、一部の場所からしかその姿を見ることができない。下の町や歩く谷からは全く見えない。村に着く前に、よく見える場所で、車を止めてくれたので、そこで写真を撮る。ロウソクの様にそびえ立っている。現地ガイドのアグリ氏は、2回のハンギングビバークで登った、と言っていた。とても美しい山だが険しい山。
準備して、谷を歩き始める。この谷は、深い渓谷で、途中に湖等があり、トレッキングルートとしても人気のあるコース。歩いている方々は、登山のグループが半分、トレッキングのグループが半分といった感じ。今日も天気がよく、気温高く、暑い。汗をダラダラとかきながら整備された快適な道を進む。3時間ほど進み、渓流沿いの涼しい木陰で昼食。キッチンスタッフが、先に行って作って待っていてくれた。
キヌアという現地の雑穀の炊き込みご飯と鶏肉のフライ、ゆでじゃがいも、サラダ、パン。味は、香辛料が強くなく、塩コショウくらいのシンプルな味つけなので、あっさりと食べられる。キヌアは、スーパーフードと呼ばれるくらい栄養豊富な食材で、ご飯代わりにに食べたり、スープに入れたり、フライの衣にしたり、と使われて食事に出てきていた。
お腹を満たし、さらに3時間ほど歩く。標高が上がるにつれ、ようやく涼しくなってきた。15時半、ラマコラル3760mという大きなテント場に到着。多くのトレッカーや登山者のテントが張ってあった。私たちも今日はここでテント泊。放牧されている牛があちこちで草を食んでいて、子牛も多くみられた。


6.26 AM8時テン場出発。今日もさらに谷を詰めて登っていく。1時間ほど歩くと、イチコーチャという湖だった場所に到着。以前にあった大雪崩の影響で土砂がたまり、今は広い平原の様になってしまったそうだ。
さらに1時間ほど進むと今度は、ハトゥンコーチャ3800mという広い湖に着く。こちらは、満々と水がある。この水辺でしばし休憩。魚がいて、たくさん獲れるらしいのだが、獲るのは禁止されている。この辺りから、キタラフ峰6036mの白い南面が見え始め、さらに谷の奥に、タウリラフ峰5830mの尖った山容がニョキニョキと現れる。深い渓谷と白い峰々、青い湖、と美しい景色が広がる。
途中から、アルパマヨBCへ向かうアルワイコーチャ谷に入る。標識があり、川には渡れるよう、簡易な橋が架けられている。大きなサンタクルス谷から分かれて、急登のこの谷を登っていく。なかなか息が切れる。途中、12時半、キッチンが作ってくれた昼食を頂く。
そしてさらに登り、13時半、アルパマヨBC4300m到着。ここは山の取り付きの広い場所にあり、4~5隊の登山隊のテントがあった。すでに上部に上がっている隊や、天気待ちをしている隊、下山していく隊など様々。アルパマヨやキタラフ自体はここからはまだ見えない。
ここからハイキャンプ(HC)へは途中氷河を登っていくのだが、そのルートの一部がここから、他の隊が登っていくのが小さい黒い点々としてよく見える。クレバス等があり、険しく大変そうだ。それをつらつらと眺めながら、明日からの上部用の荷物を準備する。
ダイニングテントでゆっくり食事ができるのは今日まで。明日からは上部での厳しい山生活。この場所からよく見える向かいの山塊にあるアルテソンラフ6025mが夕日に照らされて美しく輝くのを見てから就寝。P6270235
6.27 AM9時、アルパマヨBC出発。今日は氷河の末端のモレーンキャンプ(4900m)まで上がる。ロバはBCまでで、ここからの荷物は背負って上げる。ペルーのキッチンスタッフは強力で、氷河上のハイキャンプHC5300mまで上がってくれる予定。テントとシュラフはポーターさんに頼み、あとは各自担いで上がる。
最初は緑のあるなだらかな山道を進み、途中から岩ばかりのガレ場に変わる。岩が折り重なった道を、崩れないよう静かに確認しながら通過していく。12時30分、モレーンキャンプに到着。今日はここに泊まる。なるべく平らな岩場を探してテントを張る。氷河が目の前に迫る。
今年は雪が少なく、氷河上のルートは氷の部分やクレバスが多く、明日上がるHCへは、なかなか大変らしい。午後から天気は下り坂。氷河上部はガスの中。雨まじりの雪が降り出した。
6.28朝起きると外は数センチの積雪。上部では30センチほど積もっているらしい。AM8時、モレーンキャンプ出発。朝から雪がチラついている。
ガレ場を30分ほど進み、氷河の取りつきへ。そこでハーネスとアイゼンを付ける。ロープをつけ、アックスを使いながら進む。固い氷の部分があり、しっかり蹴り込んで登って行く。
最初は、大きなクレバスを避け、大きく蛇行しながら進む。2時間ほど進むと、大きな氷河の壁が出てきた。積雪の多い年は、ここは埋まっていて普通に歩いて通過できるらしいのだが今年はこれを登らなければならないそうだ。
アグリ氏が先頭で登り、出だしが少しハング気味の氷壁を確保してもらいながら、ダブルアックスでしっかり決めながら登っていく。荷物が結構重いので、後ろに引かれる。
一段は、50m位の壁なのだが、グサグサの氷の部分もあり、慎重に通過。一段上がってもまた同じ様な壁がある。稜線に上がるまでに3回の壁があった。息も上がり、なかなかハード。本格的なアイスクライミングでアルパマヨの事前トレーニングになったかな。P6280256
14時、ようやく氷河の上部稜線上に出た。だだっ広い雪原が広がっている。右にアルパマヨと左にキタラフがドーンと目の前に大きく表れた。ここにアメリカ隊がテントを張っていて、自分たちはもう4日ほど天気待ちをしていて、明日はアルパマヨに登る、と言っていた。「君たちはキタラフを先に登ったらどうか」と勧めていた。アルパマヨのルートは狭いので、大勢で取りつくと登りずらいので、私たちが明日登るのを牽制しているらしい。
あいさつをして、私たちはもう少しアルパマヨの取りつきに近い場所まで移動してテント設営。ここがHC5300m。ここにしばらく滞在し、アルパマヨとキタラフの2峰に登る。
天気は、夕方から回復してきている様子。明日天気が悪くなければアルパマヨに取りつく。お茶を飲みながら、明日の準備をボツボツする。夕方、アルパマヨのヒダが赤く染まるのを眺めてから就寝。
             
6.29 AM0時半 起床、AM1時 朝食、AM2時半 HC出発。
ヘッドランプを付け、ルートの取りつきまでは、緩やかな雪の斜面をつめていく。約1時間ほどで、フレンチダイレクトルートの取りつきに到着。
ここからは、雪と氷の壁。3人一組で登る。HCから山頂までの標高差は約700m。まっすぐなルートで、60mロープで10ピッチ弱。取り付き部分の傾斜は80度程度で、ルート下部は60度程度、上部にいくほど増して70~80度ほどになる。アイスフルートと呼ばれるヒダとヒダの間を登るルート。
ひたすら上を目指して、アックスとアイゼンをしっかり利かせながら登っていく。アメリカ隊6名は、私達より1時間早く出発したため、上部に居る。狭いルートのため、上からの落氷がまともに下の私達にスゴイ勢いで降ってくる。ブーン、ブーンっと低い音をウナらせながら耳の横を氷が何度も通りすぎていく。怖ーい。当たりたくない。しかし途中何度か結構大きな落氷を胸や腕、足に受け、息がつまりしばらく動けない。うー痛い。しかし、登攀不能になることはなく、動かせば動いたので良かった。
上を向くと顔に氷が当たるので、上は向くな、目の前の壁だけ見て登れ、とアグリ氏が出発前に言っていた。これ以上、大きな落氷を受けませんように、と祈りながら登り続ける。壁は、固くて真剣に叩き込まなければならない部分もあれば、グサグサでズルズルと滑りそうな部分もあり様々。
6時半過ぎ、何ピッチか登り、遠くの空が明るくなりはじめる。振り返ると、ブランカ山群の山並みが赤く染まりつつあった。今こんなルートの中に居られて、こんな素晴らしい景色が見られるとはなんて贅沢なんだろう、幸せな時間を過ごしているなあ、こんな機会を与えて見守ってくれている周りの皆さんには感謝しかないなあ、と息をゼイゼイと切らせて壁に張り付きながら思った。
途中から私たちがアメリカ隊より先行して登った。これで落氷が多少は減るので少し安心した。
AM7時半、最後の急なピッチを2ピッチほど登りきるとようやく山頂へ抜け出した。やったー、登りきった。登頂だ。うれしい、最高。天気は快晴。風も強くなく、恵まれている。青空が大きく広がり、ブランカの山並みが大きく広がる。素晴らしい。山頂は数人が横に並べるくらいの広さ。皆で握手しあい、記念撮影をして、早々に下山を開始する。
今度はひたすら長ーい下りが待っている。懸垂で下る。下から登ってくる人々がいるので、なるべく落雪落氷しないよう静かに下っていく。下っても下ってもまだまだ下には着かず。とにかく長い。下りなのに、息が切れ、休み休み下った。途中の支点で、登ってくる人達が混んでいる場所ではルートが狭く下ることができないため、その人たちが上がって通過するまで待つ。9時30分、ルートの取りつきに無事到着。9時40分、HC着。
HCで待っていたキッチンスタッフたちとハグをして喜びを分かち合う。振り返ると、今このルートを登っている登攀者の姿が、黒い点々として見えている。あんな急な所を登っていたのか、と改めて思う。
充実感がある。しかし、もっとしっかり登れるようになりたいと思った。甘い打ち込みもあったし、疲れてきて足の踏ん張りがよくなく、ズルズルと滑りそうな時もあった。また次回につながるよう、練習していきたい。何はともあれ、皆無事に下山出来てよかった。ちなみに、今回のメンバーは皆ワスカラン登頂者で高所に慣れた強い方ばかりで、高度障害は、ほとんどないか、行動に支障のない程度だったと思う。
             
6.30 今日は、ここHCで一日の休養日。明日はキタラフに登るので、その前に休養する。今日も朝から晴天。シュラフを干し、マット等をすべて出して乾かす。日が昇るとテント内は暑い。外に作った雪のベンチとテーブルでお茶を飲みながら過ごす。
ここから、明日登るキタラフのルートは良く見える。アルパマヨよりは傾斜は緩いものの、標高がこちらの方が高いためルートが長くなる。遠目にもわかるくらい大きいクレアバスがルートの途中にある。あれはどこから越えるか、などと眺めながら話をする。
天気が回復傾向なので、BCから登山者が続々とHCに上がって来ている様子。私達のテン場の隣にも、ロシア系の登山隊がテントを設営している。明日アルパマヨに登るつもりだ、と言っている。今日も、アルパマヨのルートには、登っているパーティーの動く黒い点々があり良く見えている。天気よく、暖かく、HCは素晴らしいロケーションの中にあるので、景色を眺めていても飽きない。いい場所にある。
雪の上にマットを敷き、青空の下、ゴロゴロして山を眺めて過ごす。外で思いっきり寝ころがるのは、解放感があって気持ちがいい。夕方までには、テントやシュラフも良く乾き、カラッとフワフワになり快適になった。日光浴ですっかり身体も温まり、休養できた。明日からのキタラフ北壁は、見るからに急登で長いが、がんばるぞおっと。夕日で赤く染まる美しいアルパマヨを見てから就寝。
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HCからのアルパマヨ
3.キタラフ北壁へつづく


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